定年になったら、もう一度あの海を見に行こう。
妻とそう約束したのは、いつのことだったか。気がつけば60を過ぎて、再雇用でまだ働いているけれど、年齢のことを考えると「そのうち」なんて言葉はもう使えないと思い始めた。
そう、宮崎へ行こう。新婚旅行で訪れたあの場所へ、もう一度。
「また行きたいね」が口癖になっていた
結婚したのは、ちょうど40年前のこと。
当時の宮崎は「新婚旅行の聖地」なんて呼ばれていて、私たちもご多分に漏れず、飛行機で飛んで青島を歩いた。日南海岸のあの青い海を、若い妻と二人で眺めた。
それ以来、国内旅行といえば子どもたちの希望優先。気づいたら子どもは独立して、夫婦二人の時間がようやく戻ってきた。
「ねえ、また宮崎行きたいね」
テレビで旅番組が流れるたびに、妻がぽつりと言う。私も毎回「そうだな」と返しながら、なんとなく先延ばしにしてきた。
でも今年、ついに決めた。「行こう。今年こそ。」
予算との戦い。定年後の旅はお金の使い方が変わる
再雇用とはいっても、現役時代とは収入が違う。正直なところ、旅行に使えるお金は限られている。
飛行機代、宿泊費、食事代……計算すると、1週間の旅というのはなかなかの出費になる。特に宮崎は直行便が少ないので、福岡空港を経由して、そこからレンタカーで南下するルートを考えていた。
問題はレンタカー代だ。
1週間という長期になると、レンタカーの費用はバカにならない。大手の有名どころは安心感はあるけれど、料金を見るとため息が出る。ETCカード使用料だの、各種オプションだのを足していくと、あっという間に予算オーバー。
福岡空港 格安レンタカーで検索して、何時間も調べ続けた。
徹底調査の末に見つけた「業務レンタカー福岡空港店」
ネットで調べれば調べるほど、比較サイトの料金表とにらめっこする時間が増えていった。
そんな中で目に留まったのが、業務レンタカー福岡空港店だった。
正直、最初は聞き慣れない名前だったので少し迷った。でも調べていくうちに、これは本物の格安店だとわかってきた。
料金の安さが、まず違う
同じクラスの車を借りるなら、大手と比べて数千円から、場合によってはそれ以上の差が出ることもある。1週間ともなると、その差は無視できない金額になってくる。
ETC・保険込みの料金の
「安いと思ったら、あとからオプションで高くなった」という経験をしている人も多いと思う。でもここはETCカードと各種保険が料金に含まれているので、そういうわかりにくさがない。最終的な支払いが読めるのは、予算を気にするシニア世代にはとてもありがたかった。
福岡空港から近いから、着いてすぐ動ける
飛行機を降りてから長々と移動する必要がない。車を受け取ってすぐ出発できる。体力的なことを考えると、60代の旅人にはかなり重要なポイントだった。
「ここにしよう」と、妻に報告した夜のことを今でも覚えている。
福岡空港からいざ宮崎へ
出発当日。羽田から福岡へ飛んで、空港に降り立ったのはお昼前だった。
業務レンタカー福岡空港店への移動もスムーズで、手続きも思っていたよりずっとシンプルだった。スタッフの方が丁寧に車の説明をしてくれて、心配していたETCの設定なども確認してもらえた。
受け取ったのは、コンパクトカー。ちょうどいいサイズで、二人旅には十分すぎるくらいだ。
「さあ、行こうか」
妻が助手席でシートベルトをしめながら、少し嬉しそうな顔をした。その顔を見て、計画してよかったと思った。
九州自動車道から宮崎自動車道へ。福岡から宮崎まで、高速を使えばおよそ3〜4時間の道のり。途中のサービスエリアで休みながら、のんびり走る。急がなくていい旅というのは、こんなにも気持ちがゆったりするものかと、あらためて感じた。
40年ぶりの青島。変わったもの、変わらないもの
宮崎市内のホテルに荷物を置いて、翌朝、まず向かったのは青島。
車を駐車場に停めて、橋を渡って島へ。「鬼の洗濯板」と呼ばれる奇岩が海岸に広がる光景は、40年前と変わらずそこにあった。
「すごいね、全然変わってない」と妻が言った。
私も同じことを思っていた。波の音も、潮の匂いも、あの頃と同じだ。でも歩いている私たちは確かに年をとった。若い頃よりゆっくりした足取りで、岩場を歩く。
青島神社で、縁結びのお守りを
青島神社にお参りして、縁結びのお守りを買った。「今さら縁結びも何も」と笑いながら、でも妻はちゃんと手を合わせていた。私もそっと同じようにした。
新婚旅行の写真を引っ張り出して、同じ場所で写真を撮ってみた。40年分、二人は確かに変わっていた。でもその変わり方が、悪くないと思えた。
日南海岸ドライブ。レンタカーだから自由に動ける
翌日は日南海岸をのんびりドライブした。
国道220号線を南へ走ると、右手に太平洋が広がってくる。この道が、本当に気持ちいい。海沿いを走りながら、「ここで止まろうか」「あそこも良さそうだな」と、思い立った場所に自由に立ち寄れるのがレンタカーの醍醐味だ。
道の駅でのんびり、地元の味を買い込む
途中、小さな道の駅に寄って地元の野菜と漬物を買った。「荷物になるよ」と言いながら、妻はうれしそうに袋に詰めていた。
鵜戸神宮。崖の神社に圧倒される
鵜戸神宮にも足を運んだ。崖に抱かれるように建つ朱塗りの社殿は、何度見ても迫力がある。急な石段をゆっくり下りながら、「これ、帰りがきつそうだね」と二人で笑い合った。
若い頃はこういう場所をさっさと歩いていたのに。でも、ゆっくり歩くから見えてくるものもある気がした。
1週間という長さが、旅をゆたかにした
今回の旅は1週間。それが正解だったと思っている。
若い頃の旅行は、詰め込むだけ詰め込んで、疲れ果てて帰ってくるものだった。でも今回は違った。予定を入れすぎず、気が向いたらカフェで休んで、夕暮れの海をただぼんやり眺めたりした。
宮崎グルメも、時間をかけてゆっくりと
宮崎の食事も、余裕をもって楽しめた。地鶏の炭火焼き、冷や汁、マンゴーのパフェ……一つひとつをゆっくり味わえたのは、時間があったからこそだ。
レンタカーがあるから、電車の時刻を気にしなくていい。自分たちのペースで動けて、疲れたら早めに宿に帰れる。長期レンタルを選んでよかったと心から思った。
旅を終えて。また頑張れる、そんな気がした
1週間があっという間に過ぎて、帰りは福岡空港へ戻ってレンタカーを返却した。
走行距離を見たら、思っていたより結構な距離を走っていた。でも一度もトラブルはなく、車は最後まで快適だった。
返却のとき、スタッフの方に「また利用します」と言葉が出た。本心から。
飛行機の中で、妻が言った。「来てよかったね」と。
私も、うなずいた。
定年後の再雇用という中で、毎日それなりに忙しく、お金の使い方にも気を使いながら暮らしている。でも、こういう旅が一つあるだけで、なんだかまた頑張れる気がする。
次はどこへ行こうか。そんなことを考えながら、羽田へ向かう飛行機はゆっくりと雲の上を飛んでいった。